いのちのために食べる
ビタミン教室
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不足すると…
上田優子さん(仮名・33歳)は人材派遣会社にスタッフコンサルタントとして勤務しています。毎日、派遣先の企業を訪ねて派遣のフォローをするのが仕事です。いつも笑顔を絶やさない明るい性格の上田さんは派遣先の企業の担当者からも信頼され、職場での人望も厚く、仕事は順調そのものです。ところが---。上田さんはカラダの悩みをこう打ち明けてくれました。
「20代の頃に比べて疲れやすくなったのは仕方がないのかもしれませんが、しっかりと睡眠をとっても倦怠感が残るんです。肩もこるようになったし、この頃は腰痛も気になります。やはり女性の33歳は厄年なのでしょうか」 女性の33歳は「散々(さんざん)」というわけです。
知って解決
対策
ビタミンB1は「エネルギーをつくる」ビタミンです。化学名はチアミンと言います。ビタミンB1は穀類や砂糖などの糖質を体内で分解、吸収することでつくりだしたエネルギーを神経や筋肉に供給するのです。脳の中枢神経や末梢神経の機能を正常に保つために必要なビタミンに他なりません。脳や神経系は糖を主要なエネルギー源としているのです。運動量の多い人にも欠かせません。
ビタミンB1が不足するとカラダ全体にエネルギー不足をもたらすことに加え、疲労物質(=乳酸)が蓄積されることで疲れやすく、体力が落ちたと感じたり、気分をふさぎがちにしたり、肩こりや腰痛などを引き起こします。睡眠障害や体重減少、記憶力の低下などもビタミンB1不足の初期症状の可能性があります。疲れやすい人はもちろんのこと、胃腸が弱い人や風邪をひきやすい人も意識してビタミンB1の摂取(せっしゅ)をこころがけましょう。

また、ビタミンB1は消化液の分泌をよくする効果があり、食欲不振にも効果があります。そうそうお酒をたくさん飲む人にも欠かせないビタミンです。辛党ばかりではありません。ケーキバイキングに目のない甘党の人にも必須のビタミンです。お酒や甘いものを取り過ぎると糖分の代謝が過度におこなわれ、逆に欠乏症になってしまうというわけです。1000kcalのエネルギー摂取に対して、0.4mgのビタミンB1が必要だと決められています。そうそう便秘には食物繊維をたくさん取れば良いと思っている方が多いと思いますが、ビタミンB1も関係しているのです。
ビタミンB1不足によって引き起こされる代表的な欠乏症に脚気やウェルニッケ脳症があります。脚気は心不全と末梢神経障害を来たす恐ろしい病気で、かつては日本の国民病とも言われました。ビタミンB1が発見されたことによって日本を中心とした東洋諸国の何百万人という患者が死から救われたのです。ウェルニッケ脳症は西洋諸国に多く、歩けなくなったり、意識障害を引き起こします。ウェルニッケ脳症は慢性化するとコルサコフ症という精神病に移行します。蛇足ながら申し上げますとビタミンB1を世界で最初に発見したのは日本人の鈴木梅太郎。明治43年(1910)のことです。
ビタミンB1は水溶性のビタミンですから、体内に貯蔵されることはないので、毎日とることが必要があります。

ビタミンB1を多く含んでいる食品は次の通りです。

肉類
豚ひれ肉 豚もも肉 ボンレスハム 焼き豚

■ 魚介類 ■
うなぎ蒲焼 たらこ 真鯛 紅鮭

■ 豆類 ■
落花生 大豆 そら豆 いんげん豆 きな粉 グリーンピース

■ 穀類 ■
玄米ごはん ライ麦パン そば粉
なお野菜はぬか漬けにするとビタミンB1の含有率が増えます。

食べ物イラスト
ビタミンB1に過剰症の心配はそれほどありません。多量に取っても過剰分は尿中に排泄されるので大きな害を及ぼすことはないのです。まれに浮腫(むくみ)や脈拍の増加、アレルギーなどがあります。むしろ、水溶性のビタミンですから熱に弱いことに注意しましょう。煮物などは煮込み過ぎないようにして、汁ごといただくのが良いと思います。加熱によって約30%が失われるのです。

日本人の主食はお米です。ほとんどの人は精白されたお米を食べていると言って良いでしょう。しかし、精白するとビタミンB1が豊富なヌカの大半が取り除かれてしまうのです。ビタミンB1を補いたいのであれば胚芽米や玄米など精白されていないお米を食べることをオススメします。お米を洗米するに際しては研ぎ過ぎないことをこころがけましょう。できればミネラルウォーターを使いたいところです。ビタミンB1は塩素に弱いのです。

ビタミンB1をとるに際しての注意点は一緒に摂取してしまうと、その働きを低下させてしまう食べ物があるということです。わらびやぜんまいなどの山菜、鯉などの淡水魚、貝類にはビタミンB1を分解してしまうアノイリナーゼという酵素が含まれているのです。ただし、アノイリナーゼは加熱によって分解できるので、ビタミンB1を取りたいときには、こうした食材は加熱処理をして用いるようにします。
逆にビタミンB1の働きを高める食べ物もあります。にんにく、ニラ、ねぎ、タマネギなどです。こうした野菜にはビタミンB1と反応してアリチアミンを生み出すアリシンが含まれています。アリチアミンは水に溶けにくく熱にも強いため調理による損失を減らしてくれるのです 。